はじめてのお泊り旅行

「さて、あんずさん。初めてのお泊り旅行に行きましょう」とママが言った。

「長時間のドライブ、大丈夫かな」とパパは心配そう。

こうしてわが家は5月2,3日と一泊二日の旅行に出発したの。

さいしょの目的地は糸魚川市。そう、あたしの生まれた場所だ。なんでも今日はそこで、パパがずっと見たがっていたクラシックカーフェスティバルというものがあるのだそうだ。 目的地のフォッサマグナミュージアムにつくと、そこにはたくさんの古いクルマがとまっていた。

糸魚川クラシックカーフェスティバル

パパはうれしそうにカメラのシャッターを切っていたけど、正直いってママとあたしはたいくつなのよね。だからふたりでクルマでおるすばんしていたの。

そしてその夜、あたしははじめて旅館というところに泊まったの。妙高市の燕温泉という場所なんだって。なんだかみょうなにおいがするけど、これが温泉というものらしい。 わんこさんと一緒に泊まれる宿を探すだけで大変らしいけど、この日わがやが泊まった岩戸屋という旅館は、ごーるでんうぃーくというものの直前になってママが見つけた宿らしい。

燕温泉宿泊街

宿のひとから案内されたのは畳のお部屋だった。わがやにも畳のお部屋はあるけれど、そこはあたしが入っては行けない場所。だからちょっとしんせんな気分だ。

部屋に入ると、ママは荷物の中から一枚の写真を取り出して、景色が見える窓の近くに置いた。

「みんなで一緒に旅行できて、良かったね」とママは手を合わせていた。

さて夕方になると、なぜかあたしだけ先にご飯をもらえた。

ママは「旅行にくると、おいしいごはんを食べられるんだよ。って、覚えてね」と言いながら、いつもとは違う、かんづめに入ったふわふわしたおいしそうなご飯をよそってくれた。うーん。これが旅行というものなら、なかなかいいわね。

あたしだけ、がつがつ夕ご飯を食べ終わると、

「ねえあんずさん。パパとママが食事している間、キャリーバッグの中で大人しくお留守番していてね」と言われてせまいバッグの中に一人にされた。さみしくてこわくて、あちこき引っかきまわしたら、後ろの部分が少し開いたので、そこから脱出してやったわ。

後で部屋にもどってきたパパとママは、キャリーバッグから脱出していたあたしを見て「ああ、やっぱりくるみお姉さんが昔壊した部分が開いちゃったか。こまったな。もっと丈夫なものを買わなきゃだめかな」となげいていた。でも、「脱出したわりに、ちゃぶ台の上のお菓子とかなにもいたずらしなかったんだね。えらいえらい」とあたしのことをほめてくれた。

夜。いつもはハウスでひとり寝ているあたし。でもこの日は同じ部屋にパパとママがいる。 最初はやっぱりキャリーバッグに閉じ込められたけど、すぐに壊れた部分から脱出するし、それにキュンキュン鳴いてとなりの部屋のひとにめいわくがかかりそうだから、バックから出された。

真っ暗の部屋の中をうろうろして、パパに「うるさい。寝られないよ」としかられたりしたけど、そのあとはまあまあ、おおむね、だいたい、おおよそ、あるていどは、しずかに寝ていたの。

よくじつ。まずは妙高山がきれいに見える、いもり池 という場所に行った。みずばしょうという花と透き通った池の水と、雪の残る妙高山と、そしてくもひとつない青空がとてもきれいだった。

いもり池に向かう途中で

いもり池

そのあと苗名滝に行こうとしたのだけど、途中の道がとてもぬかるんでいて引き返してきたの。残念ね。

で、そのあとどうしようかといろいろ探した結果、黒姫高原という場所のドッグランに行った。ボランティアの人が管理する無料のドッグランがあるんだって。

あたしはドッグランはまだ好きになれないけど、景色もきれいでとてもいいところね。気に入ったわ。

そのあとドッグランのすぐ近くにある、テラス席はわんこさんOKの、茶房主というレストランでお昼にした。パパもママも「ここ、おいしいね!」ってまんぞくしていたわ。

とはいえあたしはといえば、、

なにももらえなくて目がうるうるのあんずさん

そうして、新潟に帰ってきたの。

初めてのお泊り旅行。あたしはわりと、なんとなく、だいぶ、まあまあ、おおむね、おおよそ、だいたいのところは、いい子で過ごしたと思うわ。

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